【10thイベント】「活躍・定着に必要なオンボーディングとは? 〜組織課題の研究者と語り合う〜」を開催しました!

今回の記事では、TalkCampとしては10回目となる、2024年2月21日(水)に開催されたイベントについてレポートします。

4月の新入社員の受け入れ準備の時期ということで、採用や研修に関わる皆さまに向けたイベントとして、「活躍・定着に必要なオンボーディングとは? 〜組織課題の研究者と語り合う〜」と題し開催いたしました。新メンバーの組織への定着やダイバーシティなど、組織に関するテーマについて研究・実践活動を行っている正木郁太郎先生をゲストにお招きし、オンボーディングを中心として様々なテーマでディスカッションをする場となりました。

当日の内容について、ご参加されなかった皆さまにもお伝えできるようレポートします。

オープニング

【自己紹介】
まずはゲストの正木先生より、これまでのご経歴や研究内容を中心に自己紹介していただきました。組織やダイバーシティなどの研究において、学内だけでなく様々な企業で実践をされているため、早速リアルな事例もをお聞かせいただけました。

次に、参加者からそれぞれ自己紹介をしていただきました。
採用担当や研修担当、HR領域に興味をもち参加された方など、様々な立場の方がおりましたが「組織の課題解決への気づきがほしい」「オンボーディング事例を他社さんと共有をしたい」など共通の期待が寄せられました。

【事前アンケート(イベントへの関心ごと)共有】
今回、参加者の皆さまから事前アンケートに回答いただき、本イベントで聞きたいことを集めました。その回答結果をもとに、運営側でトークテーマを大きく3つに分類した結果を共有しました。
以下の記事では、各テーマにおいてディスカッションされた内容を抜粋してお届けします。

ディスカッション

テーマ1「入社前・入社まもなくの受け入れの話」

・リモートワークが多い会社でのオンボーディングの工夫
正木先生:今まさに取り組んでいる話。時代や環境が変わっても、「会社のフィット感を高める(やりたいこと・キャリアビジョンの明確化)」ということは、本質的なことは変わらない。
しかし、リモートワークで失われがちなコミュニケーションについてはより工夫をしなければいけない。社員との関係、同期同士の関係などは仕組みとして繋がりを確保する必要がある。
私が共同研究に関わった「PRAISE CARD※」のように、お互いに感謝・賞賛できる仕組みをオンボーディングに組み込んでいくことで人間関係を構築していくことができる。
※参考URL:https://praise-card.com/

・入社前の同期同士のチームビルディング、入社後の活躍への紐づけ
 タテヨコナナメの交流の意義
正木先生:同期同士(ヨコ)、タテ、ナナメ、どれも大事。
過去の研究結果では、テレワークでタテやナナメとの関係はそこまで失われていないことがわかっている。逆にヨコの関係は言われないと集まらないことも判明したので、リモートの場合はそこをケアしていく必要はあるかもしれない。

→関係が損なわれないために各社で工夫されていることは?
 A1:自社商品のワークスペースを使って、常時空間共有をしている。上司がいる場所を固定して相談しやすい場づくりをしている。その他、他部署の先輩とのメンター制度を設け、直接仕事では関わらない先輩社員との面談を通して普段言えないことも話せる空気をつくっている。
 正木先生:オフィス環境設計の観点で、上司がいる場所を固定するのは良い仕組み。また、フリーアドレスは当初問題提起されていたが、自然と同じ場所に関係者が集まることで帰属意識が高まることがわかったので、あまり厳密にルールを設けずに対応することがよい。
 A2:新卒で入社した企業では、入社前から先輩社員がメンターとしてついていた。

・「感謝し合う」という文化について
正木先生:仕事上の繋がりだけでなく、“感謝されると嬉しい”という人間的な側面に訴えかけることも重要なポイント。オンボーディングは、スキルを身につけるという目的もあるが、自社に愛着をもてるかどうかにモチベーションが左右されることでもあるので、感謝やフィードバックを示ることが重要。また、教わる側ではなく教える側も「育ててあげないといけない」という自覚をもたせることで、成長につながるので相互に効果的な施策であると考える。

・企業と新入社員が入社当初に求めるスキルのギャップについて。モチベーションを下げないように基礎スキルの大切さを理解してもらうには?
正木先生:非常に極端な事例として、とある企業では内々定後に入社後のキャリアプロセスをグラフで表し、成果の出せる時期や伸び悩む時期、伸び悩む理由は何かを見える化してやるべきことを明確させていた。
参考URL:https://hrnote.jp/contents/b-contents-saiyo-septeni-0412/

→このような方法で納得させるのであれば、やらせてみることが最も効果的?
 正木先生:一人でやらせるというよりは、先輩社員の横につけて自分自身と比較をして「敵わないな」と思わせることで学びのモチベーションを上げる方法がある。

・中途入社の方へのオンボーディングについて
正木先生:入社後のギャップについては、新卒より中途入社の方が致命傷になると言われている。新入社員は受け入れ側がサポートする気持ちで取り組むが、中途入社は即戦力としての期待を抱いてしまうためサポートが薄くなる。結果的に会社が期待することと本人のスキルのギャップが埋まらないまま、折り合いがつかない、ということも少なくない。スキル面や価値観のギャップを埋めていくように丁寧に対応する必要がある。
 →A1:中途入社のほうがオンボーディングは厚く対応している。入社後3ヶ月は研修期間を設けたり、入社後に人事と面談をして状態把握したりしてます。

・タテヨコナナメの関係づくりにおいて対応の違いはあるのか?
正木先生:「信頼関係」という点では違いはないが、ダイバーシティの観点に“立場”というタテの要素も含まれるので、タテの関係ならではの遠慮といった違いを乗り越えられるようにする工夫が必要など、ゴールは同じでもプロセスに違いはある。相手の立場を踏まえた対応として、感謝・賞賛の前向きなフィードバックが必要な場面もある。また、様々な価値観の人をまとめる目的として、お互いに腹を割って話せるような、いわば“現代版飲みニケーション”は重要なエッセンスになってくる。

テーマ2「所属部署へ引き継ぐときの話」

・人事から所属部署へ引き継ぐ際に必要な情報
正木先生:求めることは企業によって異なるので、企業として何を重視しているかが重要になってくる。「性格」「価値観」「能力」など現場が求めることや、過去の成功事例・失敗事例をもとにした観点は様々。譲れない観点は何なのかと現場にヒアリングする必要がある。
参考URL:https://www.recruit-ms.co.jp/issue/feature/0000000648/?theme=assessment

テーマ3「オンボーディング担当以外の社員の巻き込みの話」

・「半強制的」な巻き込みに効果はあるのか
正木先生:強制ではなく「半強制」で、自主的に選択できることには十分効果はある。例えばある会社では、いろんな部署の人が有志で集まって行う研究を社内副業として取り組んでいる事例がある。違う部署の人たちと集まって一つのことを成し遂げる達成感がモチベーションに繋がる。目的や目標、意義を見出せる施策であることが大切。
参考URL:https://ihi-core.tech/makaizo/

フリートーク

・「感謝」を文化として根付かせるために意識するべきこと
正木先生:私も日々模索していることではありますが…研究で言われていることとして、そもそも「感謝を伝える」という行動だけでは成り立たない。なにかしらで人と助け合って一緒に活動をすることに、感謝を上乗せすることで効果が生まれる。もう一つは、感謝を伝える側ではなく伝えられた側のフィードバックを集めること。何気ない一言が誰かのモチベーションに繋がっていることを知ることで、コミュニケーションの大切さに気付き、伝え合う文化になっていく。

クロージング

最後に進行の江川からの総括をもって、本イベントを締めくくった。
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正木先生からの的確なご回答や学術的な参考情報などが、期待通りにいただけてとても勉強になりました。また、先生だけでなく参加者の皆さまからも活発にご質問ご意見をいただけたり、自社の事例共有があったり、相互に有意義な時間となりました。
このような機会はまた設けたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

おわりに

今回はTalkCampのイベントとして数か月ぶりにゲストをお招きして開催いたしました。ディスカッションは活発に行われ、正木先生ご自身の研究や事例をベースに数多くの情報を提供いただくことができました。学術的な観点がありつつ、参加者に寄り添った身近な気づきが多くあり、「明日からやってみよう」という前向きな気持ちでイベントを終えました。

TalkCampでは不定期で様々なイベントを開催しております。
次回イベントもぜひ告知をさせていただきますので、興味のある方はぜひお待ちしております!

ご覧いただきありがとうございました。