【8thイベント】納得のいく内定承諾のために採用・人事担当者ができることとは?を開催しました!

今回は、2023年5月21日(日)に開催されたイベントについてレポートいたします。

一年ぶりの対面開催となった本イベントは、TalkCampの取り組みに賛同してくださる立教大学 キャリアセンターの林良知さんをお招きし、「企業と学生の双方がWin-Winになる内定承諾」についてディスカッションしました。

就職活動のあり方が年々変化する中、企業人事として学生の考えや意思決定の動向を把握しなければなりません。そこで、大学職員の方から見た就職活動の現状や課題についてリアルな声を聞くことで、「納得のいく内定承諾のために何ができるのか?」を探求することを目的といたしました。

また、今回は“参加型”のイベントとして、3~4名の4チームに分かれて議論をし、参加者に多く発言をしていただき、気づきを共有する場といたしました。

当日の内容について、ご参加されなかった皆さまにもお伝えできるようレポートいたします!


オープニング

最初に、運営より今回のイベントの目的について説明をいたしました。

キーノートスピーチやディスカッションを経て、「一つの正解を求める」のではなく「問いを深める」場にしてほしい、各々の状況でのよりよい採用のあり方・考え方のヒントを得られる場にしてほしい、とお伝えしました。

次にアイスブレイクとして、チーム内で参加者同士の自己紹介を行いました。


キーノートスピーチ:立教大学 キャリアセンター 林さん

ディスカッションに入る前に、林さんよりキーノートスピーチをしていただきました。

スピーチの中から特に興味深いお話について、抜粋してご紹介いたします。

■立教大学のキャリアの考え方・取り組み

  • 立教大学では、キャリア支援の方針を就職という「点」ではなく、自分らしい生き方の「線」と捉え支援している
林さんの発表資料から引用
  • 就職支援として、年間562回のプログラムを開催(就職ガイダンス、就活スキルプログラム、立教トップセミナー、キャリア相談等)
  • 「線」で支援するためのキャリア支援プログラムとして、1・2年生向けの企業訪問や、全学年を対象とした社会を知る講座、OB・OG訪問で卒業生から本音を聞ける会を設けている
  • そのほか、キャリアセンターだけでなく各学部でもキャリアに関連する講座を設けている
林さんの発表資料から引用

■納得のいく内定承諾とは?

  • 就活における「オワハラ」が深刻な問題になっている
  • しかし企業側としては期限を設けないといけない状況もあるので、どこからがオワハラなのか?を皆さんに聞きたい
  • 「納得」と「説得」のバランスが重要(内定承諾書を迫られて承諾してしまう場合、納得度が低いためオワハラと感じられてしまう、等)
  • 学生が疑問に思っていることもさらけ出したうえで承諾することが、納得度を高める
林さんの発表資料から引用

■参加者と議論したいこと

①どこまでさらけ出す必要があるのか?

働いたことがない学生にとって、就職の意思決定は難しい。何を決定打とするのかの判断基準が必要だが、さらけ出しすぎると悪い印象を与えてしまうという企業側のデメリットもある。どこまで伝えるべきなのか、企業側の意見が聞きたい。

②採用活動の早期化・長期化が進む中、早期化にのらない選択肢はあるのか?

学生の8~9割は、大手企業への就職を志望している。大手企業の選考が終わっていない状態で、早期選考した他社への内定が決められない、という状況も起こり始めている。早期選考には早い段階で接触できるメリットもあるが、大手企業の選考を待つことを考えるとコスパが悪いので、運用されている皆さまの考えや取り組みを知りたい。

グループディスカッション

林さんから頂いた2つのテーマについて、各グループでディスカッションを行った後、全体に意見を共有いたしました。

Q. どこまで企業の実状をさらけ出す必要があるのか?

グループAからの共有

「さらけ出す」というより、出してはいけない情報とは何か?から考えた。場合によっては処遇、休職、離職などが挙げられるかもしれないが、基本的にはお伝えできない情報はないと認識している。積極的に伝えるかどうかは、アピールポイントになりうるかどうかで選択していく。

そもそも、決めきれない学生とは、情報を解釈・理解して決断するための素地がないのではないか。だからこそ私たち企業人事ができることとして、自分がどう生きたいかなどの判断軸をもてるようなサポートがありえる。

どう生きたいか?という価値提供に対するプロセスが大事だということを伝え、そのために今どんな環境でどんな仕事をすべきかを明確にしていくための支援をする。

また、「御社が第一志望だけど就活はやりきりたい」という言葉をよく聞くようになった。その時点で、何をもって第一志望なのか?が明確でないことが多い。

▼林さんコメント

第一志望と言っていたものの、どれが本心なのかわからない、という学生がいた。学生は常に迷い続けている。すべての学生をキャリアセンターでフォローすることは難しいので、企業の皆さんと一緒に学生をサポートできるとうれしい。

例えば残業時間などのネガティブな情報について、「時期による」「部署による」など曖昧な言い方では学生に届かないので、より正確なデータがあると決め手の一助になる。

▼グループBからの共有

聞きたいことは人それぞれだと思うので、学生から聞かれたら、なんでも答えるようにしている。しかし、それでも納得して決めきれない理由は何かを考えた。企業側が質問しやすい環境・関係を作ることができていないのだと思う。学生にとって、あくまでも人事は採用担当であり自分を評価する人、という見え方になる。例えば、人事ではなく案内担当が面接の前後のリラックスした状態で学生と雑談をすると本音が出やすい。人事以外の別の人が介入することで話しやすい環境をつくることができるとよいのではないか。

林さんコメント

学生との関係の築き方は難しいと思う。内定辞退をする際、面接でしか関わっていない企業は伝えやすいが、良い関係を築いてきた企業には言いづらい、という相談もある。私は「面接だけでなくその前後にも、態度や言動などの素の部分を見られているから気をつけろ」と学生に助言することもあるので、そういう意味でも学生と人事が親密な関係になれるかどうかが大事なことだが、難しい。

Q. 関係構築について工夫している事例はあるか?

▼参加者コメント

上手くいっている事例として、私(人事)が選考に関わらないようにしている。説明会以降の選考では、リマインドコールとしてこまめに面接のアドバイスやフィードバック等のコミュニケーションをとる。そして、最終選考の手前から面談で話をする。そうすると、内定提示後には、学生から本音で話してくれるようになった。

Q. 採用活動の早期化に企業が乗らない選択肢はありえるのか?

グループCからの共有

早期化に乗らない選択肢は「ありえない」。知名度やブランドがある会社は後半戦で採用を進めてもよいが、中小だと早期化をするしかない。先ほどの議題でも話があったように、決断の軸がキーになる。長期化してしまうのは決断する力がないからだと考えている。

内定後の学生さんとの面談で、選考中の企業や職種をヒアリングして、各社での働くイメージを具体的に比較させて、判断軸を明確にする取り組みをしている。そのうえで自社に決めてくれれば、定着率もあがる。

▼林さんコメント

キャリアセンターでやっていることを企業人事がやってくれるのはありがたい。

自社にとって優秀な人材をとるのが当然重要だが、結局はどの企業でも“優秀”の基準は同じになっているのではないか。

参加者からのコメント

「共感」が大事なので、早期化をしておいたほうが共感してくれる学生に会える確率が高い。

最近は採る採用から、学生に認めてもらうという考え方になってきているからこそ、共感してもらえる環境をつくることが大事。

出会った時点で優秀な学生を採用することより、共感を優先して、内定〜入社の間にどれだけ教育できるかを考えている。会うたびに成長している点をフィードバックしてあげれば、自ずと成長し、入社する頃には優秀な人材となっている。そうすれば、早期化を急ぐ必要もなくなるはず。

追加ディスカッション


Q.「教育」という点で、キャリアセンターで取り組んでいることはあるか?

▼林さん回答

キャリアセンターではあくまで学生が自ら育つためのプログラムや場を提供することが大切だと考えている。そうした機会を提供し、インターンや選考の過程で企業の方と関わることで成長していく姿を見ている。そういった意味でも、企業人事の方の存在は大きい。

Q. 25卒インターンの考え方について

個人的な悩みですが、どこまでインターンに労力をかけて取り組んでいるか、皆さんのご意見を聞きたい。1day, 2daysで終わらせることもできるが、期間を長くしたほうが効果はある。しかし5daysは非常に労力がかかる。

参加者からの回答

社内で5daysという形に捉われる必要はないのでは?という話になった。それならば、「学生アルバイト」という形をとって育成しながら、採用につなげていくほうが効果的なのではないか。同時に社内の雰囲気も知ってもらえるので、入社後のミスマッチもなくなる。

▼林さんコメント

長期インターンの要望が、大学1,2年で多い。しかし、あくまでも就活のネタ作りで、長期インターンをした企業に就職したいと思っているわけではないことが多い。

Q. 内定後の課題・研修などについて学生の本音は?

▼林さん回答

キャリアセンターで聞く話は、ネガティブなものが多い(囲い込みや就活から解放されない等)。一方で入社前の取り組みとしてポジティブに捉える学生もいるので、個々のタイプによると思う。

林さんを交えたディスカッションの様子

クロージング 林さんコメント

企業人事の方は会社で決められた人数を採用することがミッションでありながら、人間として向き合ってくれているのだと知って感激しました。

キャリアセンターとしてできることは限られるので、これからも人事の方々と関わっていきたいと思います。

貴重なお時間をありがとうございました。

おわりに

120分のイベントのなかで、常に参加者同士のディスカッションが活発に行われ、参加者も林さんも、日々の疑問を率直にぶつけあって、本音で話し合えている様子でした。

林さんは学生から聞いている就活のイメージを覆されたようで、終始驚きと感動の反応を示されておりました。特に、「内定承諾期限を設けていない企業は?」と聞いた際に7~8割の参加者が手を挙げた時は、思わず声が漏れるほどでした。

今回参加した皆さまや、普段TalkCampの活動に参加されている方は、企業人事としてのミッションを果たすだけでなく、「自分と関わることで学生にどんな価値を与えられるのか?」を軸に採用活動に取り組んでいることを改めて感じられたイベントとなりました。

同志で集まって意見を交わすことで、さらに真正面から学生と向き合えるように、背中を押してもらえた時間でした。

最後に、貴重な話題提供を下さった林さんと、会場をご提供くださった株式会社ベネッセ i-キャリアの皆さまにあらためて感謝いたします。

TalkCampでは今後も様々なイベントを開催予定です!

次回もよろしくお願いいたします!